ホーム » テクノロジーとお仕事 » 人材育成って?

過去投稿一覧

ジャンル

人材育成って?

人材育成が今ちょっとしたブームです。
弊社も人材育成をテーマに無料セミナーを実施すると、あっという間に満席になります。
(いつもはボチボチなんですけどね)
それだけ、人材に関心がいっていると同時に、なかなか人が育たないということの裏返しなんでしょう。

不況になると、人を増やすことができないので、何とか今居る戦力で生産性をあげようということでしょうか。でも、簡単に人が育つなら苦労しませんよね。(ちょっとしたガーデニングだって、育てるの大変なのに・・・もっぱら私は枯らしていますが (^^;;;)

人間って、自由意志の塊じゃないですか。表面では同じような応答をしている面々も、実際何を考えているか、自分の胸に手を当てるまでもなく、分かったものではありません。
そのばらばらで個性に富んでいる人間を人材として育てるなんて、まず無理だと思ってしまいます。
結局、育てるのではなく、育つのですね。 
如何に、育つきっかけと環境を与えてやるかが、人材育成の肝だと思います。(その意味で、人材は植物と一緒かも知れない)

話が飛びますが、今年は日露戦争100年です。世界史上のターニングポイントになった戦争で、色々の分析や報告が出てきています。このあいだは、NHKでロシア側から見た日露戦争の特集をやってました。(なんのために戦争をしているのか分からないまま死んでいったロシア兵。 皇国の興廃この一戦にありと、一般庶民まで一丸となって取り組んでいた日本。モチベーションの持つ意味を理解するにもよい教材です)
日露戦争は、極東の小国が、世界最大の陸軍国と正面から戦って勝ってしまった奇跡の戦争ではありますが、色々とエピソードなどを集めていくと、実に戦争を指導した明治の上層部には、人材が綺羅星のごとくにいたことが分かります。(司馬遼太郎の坂の上の雲とか)
さらに、そのルーツを手繰っていくと、小さな「あずまや」に行き着きます。
松下村塾。吉田松陰です。

伊藤博文をはじめとした明治の元勲は、松下村塾での薫陶を受けて、維新に奔走し、幕府を倒し、新政府をつくり・・・といった混乱の中で運よく生き延びた人たちです。

ところが、じゃあ、松下村塾って、長期に渡って育成をしたのかというと、そんなことはないんですね。みんな、ほんの数ヶ月。吉田松陰の薫陶を受けて、灯った心の火を灯し続けて、世界史的な偉業を成し遂げたんですね。

同じような事例は、ソクラテスとプラトン、イエスと弟子たちにも見られますが、どれもみなドラマチックな、師の最後という真実の瞬間に立ち会った人が、大きく変容を遂げています。

でも、そうなると、人材を育成するために師はその命を捨てねばならぬことになってしまいます。
(その覚悟がありますか? 何のために? あなたの命をかける義とは?・・・ ^^;;;)

話を元に戻して、人材の育成ですが、私は、松下村塾でどのような教育(やりとり)が行われていたかに非常に興味があります。(タイムマシンが使えたら見てみたい場所のひとつです)

ある程度わかっていることとしては、
・非常にスケールも大きく、熱い人であった(日本のためには、海外の事情を知らないと思いつめ、密航をしようとして捕まって、当時は罪人の身)
・わけへだてがなく、誰とでも本気で論議をした(師弟という関係より、一人の人間として遇する)
・人の素質を見抜く力があり、その人に合わせた指導をした(伊藤博文には斡旋の才があるなど)
・最新の情報に富み理論もしっかりとしていた(11歳で藩主に山鹿流兵学師範として講義、また漢籍を通じてアヘン戦争など西洋事情にも精通)
・書物の知識より実践を重視。

まあ、最高の人材が、生徒の目線に立って、個別指導を熱く行ったわけですから、人が育つのは当たり前といえば当たり前ですが、これを今の企業での人材育成に当てはめてみるとどうなりますか?
第一線のエースを若手の育成に投入する形になるでしょうか。
とても、OKを出す企業は少なそうですね。(君が働くと3ヶ月で1億売り上げるけど、ちょっと海のものとも山のものともわからない今年の新人の教育に3ヶ月専念してくれない・・・ ^^;)

それに、人材の育成は”人材”でなければできないという、とてもつまらない話になってしまいそうです。
(人材が育たないとお嘆きのあなた、とんびは鷹を生まない・・・とは、口が裂けても言えない)

ただ、人間にはきっかけさえあればどこまでも育っていく可能性を皆が秘めているということと、
それを引き出すには、育てる側に相応の覚悟が無いと駄目だということです。
(それでも、人は自発的に”育つ”のであり、”育てる”のは難しいのですが)

魔法の杖があって、暇な人に時間をたっぷり与えて、育成・育成と唱えていれば人が育ってくるということはないことだけは確かです。
(あいつに仕事をやらせるとトラブルばっかりだから、教育でもやらせておこうか・・・ ^^;;;)