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ビジネス書のトリセツ(正直でほっと・はっとする本です)

「ビジネス書」のトリセツ
水野俊哉
徳間書店

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何よりもビジネス書を読み、書くことの喜びを見つけた人が、そのノウハウも含めて全て公開したような特異な本です。

著者は、ビジネス書に対して、パターン化・モデル化するという方法論を持って取り組んでいます。
そのスタンスが、丁度、新しい定理や理論を理解して研究することに生きがいを感じて一生を奉げている研究者と同じ香りがします。

研究者が自分の研究成果を喜色満面、全力で発表、研究過程やポイント、本当のミソにあたるノウハウも惜しげもなく公開する場合がありますが、それと同じ事を、いわゆるビジネス書を対象に実現しています。

その結果、方法論という武器を使って、淡々と世の中のおかしな”常識”を切り崩すことに成功しています。
書き手のつかみの手法をパターン化し、また、動機もパターン化。それを関連付けることで執筆者の舞台裏をあぶりだしている Part3と実例解説のPart4はこの本の白眉です。

例えば、”楽してXXX”と言った本の書き手は多いが、その背景に教材やセミナーの売り込みが連動しているケースがある といった具合です。

個人的にも、スタンス・嗜好が近いと思いました。
例えば、速読法とか本を小冊子にバラバラにして使い捨てにすることってオカシクナイ? と思うのだが、この著者は堂々”オカシイ”と書いている。
(本には神が宿っているのだから、勝手に傷つけたりメモしたりしてはいけないと、私は思っています。 図書館の本に書き込むバカを見ると、呆れるより悲しくなってしまいます・・・)

色々とつまっていてサービス精神旺盛でとてもお買い得と思わせる良書です。

ただ、私的には、どうやって、著者の長所・美点を見つけて言及しながら、駄目なところ、おかしいと思うところを散りばめて記述するかという”技巧”が素晴らしいと思ってしまいました。
まあ、それができるから、10名も売れっ子作家を俎上に上げて論評という名の解剖をする気になったのだなと思います。
(きっと、勝間女史は嫌いなんだろうなと思うけれど、キチンと中期の著述をほめていて、最盛期とまで言っている・・・ これって、ピークが過ぎたという風にルビを振れる人だけ付いておいでということかな?)

結局、変なしがらみがなく、ビジネス書以外の邪悪な目的を持っていないという強みがあるので、はっきりとものが言えるのでしょう。
そのポジション設定も絶妙です。

手品のタネがわかると、”不思議”はなくなりますが、技巧に対する感動・敬意が生まれます。
それと同じで、ビジネス書を2~30冊も読んだ人にはお勧めです。
(騙されるという学習機会も人生には大切ですから・・・)