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日下公人の遺言? 文明論に踏み込んだ予測

日下公人が読む日本と世界はこうなる
日下 公人
ワック

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いつもいつも、この方には頭が下がる。
1930年生まれ、御年80にもならんとするご老人が、どうしてこんなにも柔軟で意表をついた提言ができるのか、その秘密が知りたいといつも思う。

王様は裸というためには、曇らない目と恐れない勇気が必要です。
意識・無意識で修飾された美辞麗句やスローガンに惑わされて真実を見つめる目は曇りやすくなっています。
また、他の人と違うことに対する恐怖心・空気に流されないで自分を主張するというのは特に日本では難しいです。
日下さんは、人と違うことを言う、孤立することに対する強さを小さいころか身に着けていたみたいです。 だから王様は裸といえる強さを持っているのですね。
タブーがない、効かないので、日本は核武装をすれば尊敬される といった意見をさらりと言えてしまう。

本書では、来年を展望しての世界情勢、日本の進むべき道を例年通り記述していますが、従来と異なるのは、古代・中世・近代といった歴史の発展過程をメジャーにして、中世という社会としての豊かさを持っているヨーロッパと日本と、古代から急に現代に移行した中国、USを対立軸において、分析を行っている点です。
それに、従来の主張である、道徳の力により日本が最後は勝つ という論調も健在。

悲観的・自虐的論調・予測、大本営発表で塗りつぶされているマスコミの視点に固定されてしまっている人には、新鮮で刺激的な”ものの見方”があって面白いと思う。

ただ、全体の文脈が、特に前半が錯綜気味で、いつもの書籍に比べて読みにくかった。 文明論を取り入れた新しい取り組みであるために、混乱したということなのだろうが、年齢もあり構成力の衰えが出ている可能性もあるのかなと思った。
日本進むべき方向について、貴重な視点を提供してくれる日下さんですが、いつかは失われる時がやってくるかも知れないという、”ぼんやりとした不安”も感じました。

これからも、健康で私たちを驚かすような書籍を出し続けてほしいというのが、一読者の勝手な願いです。