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それでも自民党は下野するしかなかったのだろうね

バカ太郎解散で、今や自民党という政党が雲散霧消しそうな状況ではあるが、当時実質的な首相として経済のかじ取りをしていた与謝野晶子、鉄幹の孫 与謝野馨の警世の書がこれ。

民主党が日本経済を破壊する (文春新書)
与謝野 馨
文藝春秋

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いつの時代でも、それなりのポジションには見識のある優れた人いるものだ。そして、どんなに優秀であっても、時代の大きな潮流には逆らえず、ひどい時は汚名をかぶって歴史のかなたに消えていく。 幕末でも能力という点では幕閣の方に人物はいたはずだ。太平洋戦争でも優れた軍人・政治家が沢山いた。そして、その人たちも体制とともに、山口提督のように艦と運命をともにして歴史の表舞台から消えていった。
与謝野馨もそのリストに名前を残すことになったのか。(まだ、命永らえて、このような書物を残せたのをよしとするべきか)

今、日本は政治が故に経済も揺らいでいる。しかし、昨年、リーマンショックの大波に踏みこたえて、なんとか普通の不況にあえいでいるのは、実はこの人の揺るがない政治手法と自民党の自己犠牲に近い政策に多くを負っているのではと改めて思う。 みんながパニックに陥って、経済が貧血で死にそうだったときに、日本が差し出した資金と信用は、後世に評価されることだろう。

また、当時の政権内のごたごたが率直に書かれていて、もう過去になってしまった”自民党史”の第一級の資料だと思う。
いかに、麻生太郎が権力維持に腐心するが故に道を踏み誤ったか、政権内の経済方針をめぐる路線の違いとその論点、報道されない自民党政権の”まともな”部分が、エピソードを交えてよく書かれている。 何故いま民主党政権が官僚とうまくいかないのかもこの本を読むとわかる。スローガンとプロパガンダ、コンセプトと言葉が優先している青臭い民主党と現実の経済・問題と直面している官僚との意識の違いが対立の要因と思われる。
ただ、それも含めて、刷新する必要があったのだと思う。どんな名優もいつかは降板するのだ。そして新しい未熟な主役を認めて育てることが観客にも求められているのだから。

しかし、この人は、本当に選挙に向いていない”稀有な”政治家だなと思った。
麻生太郎でなく、この人が首相になっていたらどうなったのだろうと思わないでもないが、同時に、これでは多数の支持を得るのは難しいかなとも思う。

いずれにしても、自民党政権の熱き日々が大昔に思えてしまう時の流れの早さに改めて驚く。