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ハイパーデフレの時代

世の中はデフレですが、IT業界ではハイパーデフレが進行中です。
扱うデータの単位が指数関数的に増え続けているのです。


ムーアの法則という有名なCPUの性能(集積度)が18ヶ月で倍になるという法則がありますが、それに準じて扱うデータ量が増大を続けています。
その結果、今までは単純な量の増大だったものが、段々質の変化に転化しつつあります。
言い換えるなら一人で処理できるデータの量が飛躍的に拡大していて、それが業務内容にまで波及してきていて、業態再編を引き起こしつつあります。


インターネットの発達と整備によって、大量の情報がほとんど無料で容易に入手できるようになりました。
また、APPも単純化・高速化が進んだおかげで、かつてであれば大企業の戦略部門のほんの一握りの人間しか手にできないような情報が、簡単に手にすることができるようになりました。(今は情報がありすぎて、その洪水の中から必要なものを取り出せるかという部分での巧拙が大きいですが・・・)


その結果、昔は能力が足らないために多くの人々の力を集約するために、ピラミッド型で機能的な組織を作りました。そこでは、いかにチームを動かすかというプロジェクトマネージメントやリーダーシップが求められてきました。

しかし、今はトップの周辺数人が前線を直接動かせる時代がやってきています。 軍隊で言えば伝令はもちろん、士官レベルの佐官が必要なくなってきています。(師団長と小隊レベルを動かす下士官で十分。会社で言えば部長・課長レベルがいらなくなっている)
急にこのミドル層をなくしてしまうと、”経験ある”経営陣が生まれてこないので、これからは将来のエリートを育成するための投資対象に中間層がなる時代になっているんですね。(そこまで極端ではないですが・・・)


昔、製造業で人件費が安い海外に生産拠点が移るという心配が20世紀の終わりごろに盛んに話題になりましたが、結局製造ロボットなどの導入によって、人より機械を使う方が安く、より高度な生産のためにまた日本に生産拠点が戻ってくるといった逆転現象がおきました。
それと同様なことが今、IT業界でも起きようとしているように見えます。


オフショアで人月単価が1/2、1/3のリソースを活用されては戦えないという時代(そのため、人件費削減=人減らしの圧力がいよいよ強くなっています)ですが、実際にはそのひとつ先で、そもそも開発をしない(→パッケージを買ってきて業務をこれに合わせる)、運用もしない(→ クラウドがあたるとしたら、ここがポイント)、それでいて必要なデータやレポートは経営層が自分で作る(もしくは、それができる人だけが経営層に生き残る)という時代がすぐ目の前にやってきているのではと思います。


書籍も返本率が50%というもう末期症状ですし、著者も1万部程度では印税が100万円程度で、そこそこあたっていても、それで生活はできません。その一方で電子書籍では著者の取り分が70%といったAmazonのモデルが出てきています。(印刷・流通のコストが必要ないですからね)
テレビなどメディア業界でもそもそも広告費が入らないので、タレントを使えずADのスター化が進んでいます。その一方で、FM戸塚 のようなミニFM局のような地域密着型の分散化・専門化が進んでいます。
その結果、ものすごくコストをかけられない、そして中間を必要としないビジネスモデルしか生き残れない時代がやってきているといえましょう。


マスの時代が終わりを告げたということなのでしょうか。
ローマ帝国が滅んで古代が終わりを告げ、地域分散の中世がやってきているのかも知れません。(ちなみに、暗黒の中世というのは古い史観ですよ)


繰り返しになりますが、世の中はデフレです。 そのため、仕事がどんどん減っています。 生産能力が増えて、かつてのギリシアのように、奴隷に働いてもらって楽をできる時代がやってくると思ったら、自分はポリス市民ではなかった・・・という現実に気がついて、みんながあわてています。(残念なことに奴隷でもないことがこの問題の難しいところですが・・・)


ちょっとだけ仕事をして、ほんのちょっとの収入で、その代わり文化やコミュニティ豊かで充実した社会になるというのが、あるべき姿なのでしょうか。穏やかで平和なスローライフの社会・・・時代は仏教かな。


なにはともあれ、この大混乱時代を生き抜いていくためには、今まで以上にアンテナを高く、感度を高めて、よりクリアな目で世の中を見ていかないといけませんね。 混乱を楽しむ乱世の心構えが肝要かと。