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【書評】真実の朝鮮史

昨今の嫌韓ブームでの一連の出版物に比べると色々と深い本。

真実の朝鮮史【663-1868】
宮脇淳子,倉山満
ビジネス社

まあ、CGSでの人気番組の調子をそのまま活字に定着させた内容で、すらすらと読める。
じっくり学ぼう!日韓近現代史【CGS宮脇淳子】

昔から変な分野の本を読み漁っていたので、宮脇さんのご主人の「康熙帝の手紙」をなぜか持っていたりする。(類書がなくてレア本の扱いだったらしい・・・)

とにかく、朝鮮史を語りながら、”語ることがない”朝鮮史 を浮き上がらせている。
すぐに、日本史や満州の話にとんで、そちらが面白いという”奇書”。

改めて、天皇から防人、一般庶民まで万葉集という一つの歌集を作ってしまう日本という国の特異性に気づかされる。(お互いを知っている安心感というか・・・)

それに比べて、大陸の影響を直接受けながらも、少数支配者による統治(搾取?)と支配層内の内紛が延々と続く朝鮮半島。ある意味構造としては安定している。
かの国では、反乱を防止させるための愚民政策でもある朱子学による空理空論、名分重視の世界観が今も続いているらしい。
新井白石による朝鮮通信使の待遇簡素化に対しては文句を言わないのに、明治政府の書簡に”勅”の字があることが許せないという話は典型的で面白かった。

元寇についても徹底的に現実的な鎌倉幕府の対応(事前に情報を入手して動員をかけていたり、防塁など防御態勢を完璧に引いて上陸を許さなかった弘安の役など)、どちらかというと日本についての新しい視点が多く、勉強になった。
鎌倉幕府の正当性を公平な裁判に認め、幕府崩壊の原因を元寇による疲弊ではなく、賄賂によって公平な裁判ができなくなった長崎高資による正当性の喪失に求めているのは、まあ倉山氏らしいと言える。

また、宮脇先生の説明でモンゴルや満州の統治方法や文化、ものの考え方まで垣間見れて、大陸的な我々と異質な世界観も知ることができる。ある拠点を落とすのに、複数の軍団が日時だけ決めて、その日に合流して一斉に攻撃して落とすといったモンゴルの戦法も、大陸的で、これをやられるとたまらんなと思う反面、地続きでない日本の幸運を思う。

話としてはCGSの方が面白いが、この本の方が勉強にはなります。(時間も節約?)