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月別アーカイブ: 12月 2015

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ギリシア人の物語Ⅰ 民主政のはじまり

本当は全部読んでから書くべきで、買って数ページ読んで書くのは反則。
でも、書きたかったのは、なんで塩野七生はカエサルかアウグストゥスでローマ人の物語を止めなかったのかというはなし。
ボルジアやベネチア、フィレンツェなど中世イタリアを描いていた頃が作家としての頂点だったのかなと思う。 ローマ人の物語をライフワークにしたかったこと、特にカエサルを描きたかったことはわからないでもない。 しかし、そのあとは、義務感で書いていたのではないか、そのために、他に書くことができたはずでは、と思ってしまう。
(どうせなら、東ローマを滅亡まで書いてくれたほうが面白かったかもという矛盾したきもちもある・・)

それだけ、待っていた作品が出たということでもある。

ヨーロッパはグレコローマンとキリスト教とゲルマンが融合して出来たと習ったことがあるが、今でもローマの末裔はイタリアをはじめ各地にいるが、”偉大な”ギリシア人の末裔は、どこにもいない。
その失われた幻影を如何に描くか、興味がつきない。(最後まで完走を願う)

ギリシア人の物語 I 民主政のはじまり 塩野七生 新潮社
¥2800+Tax ISBN-978-4-10-309639-9

ヘンタイ美術館

山田五郎は僕の好みだ。 タモリやみうらじゅんやそう言ったマイナーだけど深い世界を提示してくれる人は大好きだ。
だけど、今回この”ふざけた”タイトルの本をてにして認識が改まった。
山田五郎の美術に対する造詣は只ならぬものがある。
例えば、当たり前なのかも知れないが、ルネッサンスの基準はラファエロであり、ダビンチやミケランジェロは傍流であるといった話はなかなかきけない。
アングルやドガ、マネの内面にまで踏み込んでたけし軍団を引き合いに出す柔軟さ。
西洋絵画の歴史をこんなにコンパクトに明晰に示してくれた書物は見たことがない。 タイトルがにだまされてはいけない。

ヘンタイ美術館 山田五郎、こやま淳子 ダイヤモンド社
¥1500+Tax ISBN 978-4-478-06608-9

珈琲店タレーランの事件簿

やっと読み終えた
長い期間読み続けて未だ読み終えていない本はあまたある。中には中学の頃から読みはじめているダンテの神曲のようなものもあるが、まあこれは挫折したというのが正しい。
しかし、タレーランは正真正銘、読み続けて(正確には持ち続けて)いた本で、続編が出れば買いで既に4冊あるのに、やっと1冊目を読み終えた。

美人バリスタがいれるコーヒーと謎解き。

面白い、が少し違和感がある。
事件の動機に不自然さがあると思う。
人間心理の深い部分を描こうとして、滑った感じ。

まあ、しかし、描かれている世界は美しい。薫るという言葉がぴったり。人物も情景も細かい蘊蓄も。
それだから、延々と少しずつ読み続けていられたと思う。

カバーのイラストも秀逸だが、イメージが固定してしまう危険性も。

まだ、3冊も残っているのは幸せなのか・・・

珈琲店タレーランの事件簿 岡崎琢磨 宝島社文庫
¥648+Tax ISBN 978-4-8002-0072-3

談志が死んだ

まあ、面白い。 なにがって、談志が。

よくもまあ、こんな男の弟子だったもんだなと尊敬さえ覚えてしまう。
とにかく、ケチで見栄っ張り、わがままで小心者、短気で言い出したらあとにはひかない、それでいてとにかく天才、落語愛にあふれて、誰よりも芸に鋭く純粋。寄席から追放されても個性の強い多くの弟子を世に送り出し、笑点を始めたアイデアマン、政界さえもしくじりの対象、騒動を起こしてもそれをネタに生まれ変わらせる芸能の神。ついには、その声を失うというドラマ性。
ただ、どこか”判断”を家元に委ねているのが一門の欠陥か。
師匠の罵声一つで震え上がる世界がまだあることに驚く。

最後の最後に”あれこれって小説なの?”となる。

どこまでがFactでどこまでがFictionかもわからないが、こんな話は”作れない”と思う。

談志が死んだ  立川談四楼 
新潮文庫 ¥520+Tax ISBN-978-4-10-127322-8

2015年 中国の真実

今後の中国がどうなっていくかについて知りたい場合は、この本を読むべし である。

長谷川慶太郎の”中国ダメダメ”論のようには明確に未来像を断言しているわけではないが、地に足がついた詳細な情報に基づいて今の中国と周辺国の今の状況と近未来を描いている。
習近平の愚作により反中国同盟が形成された、といった昨今の表面的で楽観的な見通しが世の中には流れている。(日本の願望もそこには入っている)。
本書はそれだけの立場にはたっておらず、各国の微妙なポジションと内実について触れているところはさすがである。
また、権力闘争がすべて”であるという中共の本質にも触れていて、なぜ外交的に”あんな愚作”を繰り返すのかという疑問に間接的に答えを出している。

ただ、特に、石平さんの習近平たたきは個人的怨念があるのかと思うくらい。宮崎さんにしても、独自のスタンスで持論(たとえば第七艦隊購入論)を展開しているので、割り引いて読む必要も当然ある。 が、本書の価値がそれで下がるわけではない。

世の中には想像もできない悪者がいるという前提にたてば、最悪の中共が最悪のたくらみを続けながら、簡単には倒れないという可能性にも備えておく心構えが必要と思わせられる警世の書。

2015年 中国の真実 中国は習近平に潰される? 宮崎 正弘・石平 WAC出版 ¥900+TAX  ISBN 978-4-89831-704-4