老舗のかばん屋が泥沼の相続争いをしているというニュースは知っていたが・・・
一澤信三郎帆布物語 (朝日新書)菅 聖子朝日新聞出版このアイテムの詳細を見る |
一枚の紙きれで家業を取り上げようとした長男と周囲と顧客の支えによって取り戻した三男の物語。
著者が三男の側に立っているという自覚のために、ドロドロの相続争いを期待すると肩すかしをくらう。 長男側の情報もないので、書かれていない事実も多くあると思われるので、ドキュメンタリーや事件そのものを知るには不十分。 むしろ、ものづくりにかける三男と亡くなった先代への応援歌である。
それにしても異様な事件だ。 結局は偽造と判定された第2の遺書によって、銀行員だった長男が家屋敷から会社まで取り上げる一方、三男には職員すべて、町内、取引先、顧客までがついていくといく形になり、逆転勝訴も勝ち取ったもの。
普通に考えれば、勝敗は明らかなのに、ここまでもつれてしまったということに問題の根っこがある。
長男は銀行界に長かったらしい。そこで、他人の相続にからむ色々を見てきたのだろうか。筆跡鑑定の危うさや一審の持つ重さを知るだけでもこの本を読む価値があるが、それを、長男は知っていたのだろう。
それにしても、長年かけて身に付けた知識と技術が、親の家業を揺るがし、悪魔に魂を売る所業であったとすれば、悲しいことだ。
そして、それがグローバルスタンダードというものであるとすれば、心して備えなければいけない。 悪人の手口を知って、悪事を行えなくすることが求められる世の中なのか・・・
一方、この本で示していることは、こだわりの仕事をすることの大切さ。
愛情を持ち、より高い品質で、顧客中心の製品を手間暇かけて作り、提供することが、顧客の支持を得て、結局最後には商売に勝っていくという教訓。
周囲に支えられて、長い時間軸でものを考え、信頼・信用を大切に、利益優先ではないビジネスのありかた。 これは、日本が持っていた美点であり、これからも持ち続けるべき生き方だ。
結局、値段の勝負に持ち込まないで、”本物”で勝負をする。そして、本物は簡単には作れないし、本物を作る力は日本にはあるのだから。
まあ、先代の人柄を含め、一澤帆布の歴史も記述されていて、”物語”としても面白い本です。
シンザブ物語
はじめまして。
一澤信三郎帆布(通称 しんざぶ)の関連本が出ていたんですね!
わたくし、しんざぶのファンながら今まで全く知りませんでした。
『しんざぶ物語』・・・・早速手にとってみようと思います!
情報、参考にさせてもらいましたm(_)m