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将棋の三すくみについて

最近は藤井聡太の勢いが凄くて1強になりつつある将棋界ですが、少し前まで 藤井 ・ 渡辺 ・ 豊島の三すくみが話題になっていました。

中村太一プロのコメント(特に豊島将棋に対する評価)を元に、自分なりに理由を考えてみました。

ご存じ藤井聡太三冠は詰将棋の天才で伊藤看寿の生まれ変わりかとも思われる程ですが、時間がある限り読む精度の高さが特徴。

渡辺 明名人は戦略家で序盤研究で築いた有利を、局面を単純化して細い攻めをつなげて勝ち切るのが特徴。

豊島将之竜王はコンピュータとのスパーリングで鍛えられた精度の高い将棋を指し、難解な局面も恐れず踏み込みが良いのが特徴。

言うてみれば、渡辺さんは縦に掘り、豊島さんは横に広げるタイプで、そこに深堀の藤井さんが加わって異なる方向性から三すくみになっていたというのが私の考え。
(藤井 > 渡辺  > 豊島 > 藤井 )

藤井vs 渡辺)
双方の研究をぶつける形で、最後はどちらが先にゴールするかというスピード勝負になる。
結果、藤井先生が読みの深さと正確さで勝っていると思われる。毎回の様に歴史に残る一手を指されているのも、渡辺先生の読みの世界の外から好手を拾ってこないと勝てないともいえるし、毎回拾ってくるのも見事といえる。

藤井vs豊島)
豊島先生に広げられた局面、複雑さの混沌に引き込まれ、効率よく読むことがかなわず、時間を削られて、最後は短時間読みの精度差で負かされる。
まぁ、師匠が気を利かして奨励会時代に稽古試合を豊島先生と組ませたことで、読みの傾向をつかまれていて、豊島先生の読みの効率(切り捨てる効率の良さ)がデビュー直後の連敗につながっている可能性もあるとは思います。

渡辺vs豊島)
渡辺先生の思い切りと効率の良い切り捨てが功を奏して、豊島先生の緻密な読みが無駄にされて、時間も使わされて先にゴールされてしまう。 豊島先生が仕掛ける幾多のトラップも羽生先生との死闘を経験している渡辺先生には容易に発見・回避されてしまいゲームセット。

当然ですがメンタル的な要因も大きいと思われます。
豊島先生は早い段階で藤井聡太の危険性を熟知して徹底的かつ全力で対策・連勝をすることで心理的優位性を築いた。
一方渡辺先生は藤井先生に対して最初の数局に読み負けたことを冷静かつ客観的に受け止めたが故に(渡辺先生の長所でもあるが)心理的に位負けをしている可能性もある。(年齢や世代交代の目に見えないプレッシャーもある → 最近の羽生さんの不調もこれかな?)
また豊島先生は長らく挑戦はすれどタイトル獲得はできないといったことが長かったり、最近では防衛が苦手というメンタル的に弱めなところがあり、対渡辺先生では位負けしている可能性もちょっとだけ考えられる。

ただ、この三すくみ(多分将棋の傾向に依存する本質的なもの)も藤井先生の驚異的な成長と藤井・豊島のタイトル最大19連戦(王位・叡王・竜王)によって崩れつつある。

まぁ、とは言っても長期的な対策・戦略もあり、渡辺先生も変わることを厭わない(穴熊大王からバランス重視の木村将棋風に変貌して名人になっています)ので、どうなるかはわかりませんが。