もうすぐ、第一次世界大戦が勃発して100年がたとうとしている。
常にヨーロッパの歴史の中心にあったハプスブルグ帝国と東ローマ帝国の流れを継ぐロシア帝国、東方の脅威であったオスマントルコ帝国、そして新興のドイツ帝国という4つの帝国が滅び、勝利した英仏とも社会を支えるエリート層に甚大な人的被害を被り、ヨーロッパが没落する一因となった大戦争。
しかし、不思議なことに、大戦争を始めよう、大戦争になると考えていた政治家・外交官・軍人が誰もいなかった、始まりがとても不思議な大戦争でもある。
この本
第一次世界大戦はなぜ始まったのか (文春新書) | |
別宮 暖朗 | |
文藝春秋 |
はそんな大戦争がなぜ始まったのか、なぜ止めることができなかったかについて、詳細に解説している。
最初に、プロイセンによる普墺戦争、普仏戦争から説き始め、
・鉄道の登場により軍隊の展開速度が向上し短期間で勝敗が決まる戦争の変容。
・大規模化して動き出すと止められない軍隊。(特にドイツとロシア)
・個人に依存する大国間交渉と力の均衡による脆い平和、複雑な利害関係。
・数次にわたるバルカン紛争の延長線上でとらえられるサラエボ事件。(単なるきっかけ)
・同盟関係の進展により次々と引きずり込まれる大国たち。(白紙委任状をオーストリアに渡したドイツ)
・国際情勢と関係なく、実行されたシェリーフェンプラン。(それしかなかった作戦計画)
そして、ベルギーに対するドイツの攻撃で第一次世界大戦は始まったのでした。
登場人物が多岐にわたり、経緯が細かく記述されているため若干読みにくいが、独墺(伊)三国同盟と英仏露三国協商の対立にサラエボでの一発の弾丸から着火して始まった大戦争といった単純なものではなく、多くの錯誤と行き違いから大火になってしまった誰も望まない、誰も想定していなかった戦争であることがよくわかる一冊。
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